唇が、覚えてるから

「何やってるの!」


そのとき。

病室が一筋の明かりで照らされた。


祐樹の体に伏せた顔をあげると。

眩しい光の向こうに見えたのは、険しい顔をしている看護師さん。

そして、真理と希美。


「琴羽っ!」 


2人が病室に飛び込んでくる。


「ねぇっ、これは何かの間違いだよっ、だって、祐樹はっ……」


祐樹の体にしがみつく私を、2人が抱え上げる。 


「うん、分かったから…っ」

「琴羽、ひとまず寮に帰ろう?」


それでもしがみつく私に2人は取りなす様に言葉を掛けるけど、私はなり振り構わずその手を払う。


「寝たふりしてるだけなんでしょ?みんなで私を驚かそうとしてるの?ねえっ……」

「辛いよね……」

「祐樹起きて、ねぇ祐樹起きてっ!!」


どうして目を開けないの……?

心臓だって、ちゃんと動いてるのに……っ。


「……琴羽」

「いやだっ……こんなのっ……。絶対信じないっ!!!!」

「琴羽っ!?」


2人の胸の中で暴れ続けていた私は、そこでふっと意識が途切れた。
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