唇が、覚えてるから
食欲もなくて、体重も落ちた。
それでもやっぱり毎日同じように時は流れ。
過酷な実習は続いていく。
あれ以来。
祐樹は私の前に姿を見せることもなく、本当に幻を見ていたのかとさえ思えた。
あれは、私の長い夢だったの?
忙しい毎日の中の現実逃避、ただの妄想……。
束の間の、幻想。
でも、確かに祐樹は私の側に居た。
私には分かる。
だけどこんなこと信じてくれって方が無理。
だから。
もう祐樹のことを私から口にするのはやめた。