唇が、覚えてるから
そっと手のひらを広げて、ゆっくり祐樹の頬を包む。
温かかった。
祐樹はちゃんとここにいるんだね?
私が見たのは夢でも幻でも何でもないんだ。
ちゃんとここに存在するんだ。
誰が認めなくても。
「ゆう…き…」
喉元まで押し寄せてくる熱いもののせいで、言葉にならない。
祐樹は確かにここにいるのに……
………だけど…
「泣かないで……」
切なそうに落とされる祐樹の声が、また私の涙腺を崩した。
だけど今は、祐樹のお願いを聞き入れることは出来なそう。
また祐樹に会えた。
たとえ、それがどんな祐樹でも。
久しぶりに感じることの出来た祐樹がたまらなく嬉しくて。
目の前に祐樹がいるだけで、胸がいっぱいになって。
涙が、止まらない。