唇が、覚えてるから

「俺が…怖くないの……?」

「……怖くなんかないよ」


怖くなんか………

怖いわけないじゃん。

また会いたい。

心からそう願っていたんだから。


「……ありがとう……」


祐樹の手が私に伸びてくる。

同じように、頬に触れる。

その手が温かければ温かいほど、


「ゆう……き、どうして……」


分からないことがありすぎで、胸の中が張り裂けそうになる。


「……ごめんな……」


そう言ったきり、長い沈黙が続いた。

互いに、頬の上の手に自分の手を重ねたまま。



そして。


「……聞いてくれるか?俺のこと……」
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