唇が、覚えてるから

祐樹の視線がまっすぐ刺さった。

いつもと変わらない、祐樹の透き通った瞳が。


……祐樹が、私を……好き……?


「……っ…」


一番聞きたかった言葉なのに。

だけど……これは……。


……世界一嬉しくて。

……世界一悲しい告白。


透き通った祐樹の瞳が、次第に切ない色に変わり、


「……俺達…出会っちゃいけなかったのかな…」


胸の中に私を引き入れた。


「祐樹……」


私達の恋は……。

決して許されるものでも、誰に認められるものでもない。

きっと……叶うこともない。


───それでも。

私達はしばらく抱き合ったままでいた。


理解してもらえなくても。

信じてもらえなくても。

私だけが知っていればいい。


この瞬間を。
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