唇が、覚えてるから


「ううっ……」


なんて、悲しすぎる運命なんだろう。

こんなにも互いに想い合っている親子の明日に、希望が見えないだなんて……。


「……祐樹……私の子供に生まれて来てくれて、ありがとう。優しい息子を持てて、お母さん幸せだったわ……」

「母……さんっ……」


小刻みに震え続ける祐樹の肩。


その肩に手を掛けたい気持ちを今は抑えて。

私は少し離れたところから、そんな親子2人を見守っていた。



これが最後かもしれない。

そんな悲しい予感を抱きながら……。




「……疲れたから…ちょっと寝るわね……」

「ああ…。おやすみ………」


祐樹はいつまでもいつまでも、中山さん……お母さんの寝顔を見つめていた───…
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