唇が、覚えてるから

ちゃんとお母さんの最期を見届けに来たんだね……。


中山さんには、もう祐樹の姿は見えないかもしれない。

それでも、きっと伝わっているはず。

……感じてるはず。

……祐樹を………




もう、奇跡は起こらなかった。

しばらくして、中山さんは息を引き取った。

苦しむこともなく、静かに。

元気な祐樹の記憶だけを残して。


その顔は、とても穏やかだった。
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