唇が、覚えてるから
「出会わなきゃよかったなんて言って、ごめんな」
「………ん」
「出会えて、良かった」
「……ん」
「好きって言ってくれて、嬉しかった」
「……ん」
「……キス出来て、嬉しかった」
「………ん」
「俺の人生で、生涯最高の出会いだった……」
祐樹の手が私の頭に優しくおろされた。
「……私も……同じだよ……祐樹との出会いは、私にとっても人生で最高の……」
「そう言ってくれて嬉しいよ」
祐樹は私の頭を撫でながら続きを遮った。
「でも琴羽のは、現在進行形でな」
「……え?」
「琴羽の生涯最高の出会いは、……まだ先の話、だろ?」
「……」
……祐樹がいなくなったあと、私は誰かに恋をするんだろうか。
人生を共にしたいと想うほどの相手に巡り合うんだろうか……。
今はまだ、そんなこと全く想像もつかないけど。
「その時まで、その言葉はとっておけ……」