唇が、覚えてるから

「今日のはぜったいにあのイケメンが悪い!」


こうやって愚痴も聞いてもらえるし。

今日の実習が終わってから、私は愚痴り通しだった。


「あのイケメンに声をかけられなかったら、稲森先輩には怒られなかった!」


ほんと運がなさすぎる。


「しかもあのイケメン、バカとか使えないとか言うし!何様なの!?くやし~!」

「彼は、もしや千里眼!?」

「……なんか言ったあー?」

「い~え、独り言」


……なんか、腑に落ちないけど、


「あーもうっ、あのイケメン野郎、本当にムカつくー覚えとけ~!」


スクッと体を起こすと、枕を彼に見立ててボカボカ殴った。


「へー。そんなにカッコよかったんだ?」

「へっ?」


キョトンとして真理を見ると、ニヤニヤしている。


「ずっと思ってたけど、イケメンイケメンって。ムカつく奴なのに、イケメン?」

「そっ、それはっ……」
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