唇が、覚えてるから

力強く私の瞳を見つめる祐樹に、私も首を縦に下ろした。


祐樹がいなくなっても、私の人生は続いていく……。

それを象徴する祐樹の言葉に、いよいよすべての現実味が帯びてくる。


私の頭を撫でてくれる祐樹の優しい手は、この運命を受け入れたことを『えらいよ』って、誉めてくれている気がした。


穏やかな瞳。

それはまるで、残された時間を1秒たりとも無駄にしない様に、私を目に焼き付けている。

私はもう一度、言い直した。


「祐樹に出会えて……最高に…幸せ……だった。

好きになって……本当に……よかった…っ」


過去形で口にしなきゃいけない辛さに、声が震えてしまうけど。

……この言葉を、祐樹が向こうに持っていけるように。
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