唇が、覚えてるから
第5章
雨が君を連れていく
気がついたら、寮のベッドの上だった。
自然の明るさに包まれた部屋に、今が朝なんだと知る。
「フラフラしながら帰ってきて、ここへ入るなり倒れちゃったんだよ……」
ベッド脇には、心配そうな真理の姿。
その奥の壁には、きちんと制服が掛けられていた。
「……」
ズキン…と、胸に痛みを覚える。
昨日のこと、夢じゃないんだ。
そして、唇にそっと指を乗せる。
まだ、残ってる気がした。
祐樹のぬくもりが……。
視線を落とした私に、
「……祐樹君のこと……?」
真理が心配そうに聞いてくる。
「………迷惑かけてごめんね」
真理だって毎日実習でへとへとなのに、すごく申し訳ない。