唇が、覚えてるから

「祐樹っ!」


私は祐樹の病室へ飛び込むと、医師たちの間に割って入り、その手を取った。


「あなたっ……何やってるの!邪魔になるから出て行きなさい!」


そんな私に誰もが驚いた眼を向け、一人の看護師が祐樹から私を引き離そうとする。


「いやっ……!」


そんな声も手も払いのけて、


「祐樹っ!祐樹っ!!祐樹っ!!!」


きつく手を握り締め、名前を呼び続けた。


耳を塞ぎたくなるような機械の異常音。

これは、祐樹の命が消えようとしていることを知らせている。


ダメ。

消しちゃダメっ……。


覚悟したはずなのに、いざそれを目の前にすると怖くてたまらなかった。

立っていられないほど足が震えて、崩れるように膝をつく。
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