唇が、覚えてるから
咄嗟に否定できなかった自分が見苦しい。
散々けなしておいて、つけたあだ名がイケメンじゃあね……。
「琴羽がこんなにムキになるのも珍しいし」
もう2年以上付き合いのある真理には、私のことはお見通しで。
「……うん。かなりのイケメンだった」
嘘をついてもすぐバレるから、そこは正直に答えた。
「そのイケメン、誰かのお見舞いに来たんでしょ?ということは、また会えるよね~」
ふふ~んと鼻を鳴らしながら、真理がチラチラ見てくる。
「もう二度と会いたくないっ!あんな奴!」
プイッとそっぽを向くと、真理がまた煽るようなことを言ってくる。
「彼がお見舞いに行くとこって外科でしょ?じゃあ私のテリトリだわ。明日にでも会えるかも。そしたら唾つけちゃおっかな。ふふっ」
「どーぞ。ご自由に!」
ピッ。
リモコンで灯りを消した。