唇が、覚えてるから

……そんな最近のこと?

少し首をかしげた私に。


「それ、琴羽ちゃんだよ」


悲しさを瞳の奥に隠し持ちながら、海翔君が私を見つめた。


「えっ……」


私……?


「お母さんのお見舞いに行ったとき、病院で琴羽ちゃんを見かけたらしい」


祐樹が……私を…?


「アイツ……琴羽ちゃんの笑顔に一目惚れしたんだよ」

「……っ…」


海翔君は、そのときの祐樹との会話を教えてくれた。




『俺、昨日運命の出会いしたかも』

『は?なにそれ』

『母さんの見舞いに行った時さ、先輩看護師に怒られてる看護師見つけて、面白いからちょっと見てたんだ』


……それって。

実習の初日。

消毒のビン、ぶちまけちゃった時……?
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