唇が、覚えてるから
ねぇ、祐樹。
私、相変わらず叱られてばっかりだよ。
祐樹のことを思い出してしんみりしてる暇もないの。
空の上で、笑ってるかな。
またかよって。
でも、私らしいでしょ?
祐樹との約束、守るね。
『琴羽はいつでも笑ってて』
今度こそ、もう泣かないから。
医者になりたかった祐樹の思いを背負う…なんて大それたことはやっぱり言えないけど。
私は私のやり方でまっすぐに進んで行くからね。
命を救う現場で、私が今日出来ることを一生懸命やっていく。
そしていつか、命の強さや命の尊さを、伝えられるような人になりたい。
私には出来るって、祐樹が言ってくれたから。
負けそうになったときは、力、貸してね。
淋しくないと言ったらウソになるけど。
悲しくはないよ。
祐樹は……
ずっと私の想い出の中で生き続けているから。
目に見えなくたって、私と祐樹はいつも繋がっている。
きっとそばに居てくれる。
そう思うことで、私はまた強くなれるの……。