唇が、覚えてるから

「もうちょっとで楽になるからね」


いつか私がしてもらったように、苦しそうにしている子の背中をさする。


「ありがとう、おねえちゃん」


天使みたいな笑顔。

こんな小さい子に、私は毎日幸せを分けてもらっている。


私も……頑張らないと……。





「おねえちゃんて彼氏いるの?」


隣に座っていた小学1年生くらいの女の子が話しかけてきた。


「えっ?」


最近の小学生はなんておませさんなんだろう。

みんな口を揃えてそんなことを聞いてくる。

私は小さいとき、そんなこと看護師さんには聞かなかったのに。

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