唇が、覚えてるから
……本当にそうなのかな。
こんな感情、いつか忘れていくんだろうか。
私はそんな風にはなりたくない……。
爽やかな夏の朝には似合わない会話。
女子高生が朝からする話にしては重い。
けれどこんな話に涙するのも麻痺しつつあるほど、私達にとっては、日常的なものなのだ。
「あなた達、何しにここへ来てるの!!」
突然後ろから雷が落ち、私はビクッと肩を震わせた。
この声は、稲森(イナモリ)先輩だ。
「大体、患者さんの噂話は慎みなさいと言っているでしょう!どこで誰が聞いているか分からないのよっ!?」
「「「……はい」」」
「まったく……。あなた達みたいな人が看護師になるなんて、大丈夫かしら……」
───私達は、未来の白衣の天使だから。