唇が、覚えてるから
君は救世主
「五十嵐さん、今ちょっといい?」
お昼の休憩が終わり、ナースステーションへ戻ると稲森先輩が私を呼びとめた。
「はい」
「これを、外来へ持って行ってちょうだい」
「分かりました」
「用がすんだら、道草をせずに真っ直ぐ帰ってくるのよ?」
「………はい」
私はもう幼稚園児レベルな扱い?
はじめてのお使いじゃないんだから……。
軽く落胆しながらも、肝に銘じるように返事をして、すぐに1階の外来へ向かった。