唇が、覚えてるから
「なっ、なんだ君はっ…」
「看護師とキャバ嬢一緒にすんな」
手をポキポキ鳴らしながら威嚇していたのは──
昨日、外来で会ったイケメンの彼。
なんでここに!?
そう声に出す間もなく
「いてててーーーっ!」
次の瞬間、彼は小林さんの手を締め上げた。
小林さんは力ずくでそれから逃れると、床にうずくまる。
「ちょっと何やってんの!この人はっ……」
私が慌てて小林さんに手を伸ばすと、
「末期ガンでもなんでもねーよ」
彼がキッ……と目を剥いた。
「えっ……」
「ただの健康診断」
ファイルをトントンと叩かれて、それを手に取って確認すると、本当に健康診断の書類だった。
「チッ」
小林さんは小さく舌打ちすると、バレタか……って顔でニヤリと笑う。
……嘘。
私、騙されてたの……?