唇が、覚えてるから
「なに顔赤くしてんの?」
「あ、暑いだけですっ!あ、あなたの名前は!?」
「ふーん、俺の名前知りたいの?」
悪戯っぽく笑う彼に、私は更に顔が熱くなった。
「……っ。私のだけ知ってるなんて不公平だから!」
……本当は、知りたかったんだ。
「高いよ?」
「……?」
「うそうそ」
「……!?」
「長谷川祐樹」
───ハセガワユウキ。
冗談の後に告げた名前は。
私の胸を支配するには容易くて。
その日、私は何度もその名前を心の中で唱えた。
二度目の出会いは、ちょっぴり甘酸っぱくて。
忘れられない声と瞳と手に
戸惑う自分がいた。