唇が、覚えてるから
「男子はほとんどの子が野球部でみーんな坊主頭。だからみんな同じ顔に見えてた」
「強かったの?」
「ううん。顧問の先生だって野球経験ないもん」
「弱い上に坊主にされて気の毒なこと」
そう言って笑う祐樹は、ラクロス部のキャプテンだったんだとか。
そしてこのルックス。
天は二物、いや三物を与えたものだよ。
私は祐樹って呼ぶのに、祐樹は相変わらずタマゴって呼ぶ。
2週間もたてば、これでもちょっとは使えるようになって来たんだから。
その呼び方をやめるようにお願いしているのに、全然やめてくれない。
それでも、祐樹と話すほんの僅かな時間が楽しくて。
今日も会えないかな。
気づけば、外来ロビーで祐樹のことを探していた。