唇が、覚えてるから

ニヤッと口をあげる祐樹に、ムキになりかけて……

……やめて。


「私、小さいころからずっと喘息で病院通いしてたの」


聞いてもらいたかったから。


「喘息?」

「うん。発作が始まると本当に苦しくて。死んじゃうんじゃないかって思った。いつ発作が始まるか分からないから吸入器も手放せないし、救急車で運ばれることもあった」


……祐樹に。


「結構ひどかったんだな」

「だから4年生のときに、東京からお父さんの田舎のM町に引っ越して来たの」


私のこと。

知ってもらいたかったから。
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