唇が、覚えてるから

会話の続きを遮る様に鳴りだしたそれに、祐樹もまた口を噤む。


「わわっ……」


なんてタイミングが悪いんだろう。

咄嗟に鞄を押さえて、着信音量を抑えようとしたけど。


「……出た方がいいんじゃない?急用だったら困るだろ」


祐樹は鞄に目を向けた。


「ご、ごめんねっ」


こんな時に、もうっ。何で鳴るのよ!

帰りのロッカーでマナー解除したことを後悔した。


でも。


「えっ……」


ディスプレイを見て。

解除しておいて良かったと思ったのも……すぐだった。
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