唇が、覚えてるから
「私って、矢部さんも知ってる通り失敗の連続でしょ?でも失敗するとね、もう同じミスはしないようにって学習するの。ほら、テストで間違えたとこって復習するからより覚えるでしょ?」
「……」
「私たちはまだ学生だし。今たくさん失敗して、いっぱい勉強して……そうやって実践は身についていくんじゃないかな」
「……」
「出だしは人よりちょっと遅れるかもしれないけど、きっと正看護師になれた時には、すごく色んなこと経験してて」
「……」
「だから、ちょっと人よりお得」
正看護師になれたとき、きっと私はそう思うだろう。
「……ノー天気にも程があるわ」
ずっと黙っていた矢部さんがとうとう口を開いた。
かなり呆れた様子で。
「それは単に、あなたに最初の知識がないだけでしょう」
「うっ……」