唇が、覚えてるから
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「もう落ち着いたから大丈夫よ」
中山さんは、その通り落ち着いた顔で眠りについていた。
こうしていると、さっきの姿が嘘みたいに穏やかな顔をした綺麗な人なのに。
「五十嵐さん、着替えてきなさい」
「……はい」
こんな経験は初めてで、さすがにショックが隠せない。
私はまだ足の震えが止まらなかった。
「最近、幻覚や幻聴の症状も出てきているのよ……」
「えっ……」
着替え終わってナースステーションへ戻った私に、衝撃的な事実が告げられた。
目の前には、今までの中山さんの病状やこれまでの看護がつづられたカルテ。
まだショックが隠せない私に、中山さんの現状を伝えてくれる。