唇が、覚えてるから
その話を持ち出した途端、今作り直したばかりの笑顔が再びスッと消えた。
この間、この話をしたときのように。
「いいよ、その話は」
軽く頭を振り、そむけた顔を私は追いかけた。
「ずるいよ。私の夢は知ってるのに、祐樹は教えてくれないなんて」
……この間も今日も、どうして言い渋るんだろう。
「ずるいって、琴羽はもう見たまんまだったろ?知るなって方が無理だ」
「そうだけど。知りたいよ。……祐樹の夢」
……好きな人のことはなんでも知りたいから。
日に日に大きくなっていくこの気持ち。
初対面の印象を覆す、祐樹の真っ直ぐで迷いのない性格。
こんな人が側に居て、惹かれないわけない。
祐樹の言葉は、いつも私を的確な道へと導いてくれる。
看護師になるという夢の支えに、もうなくてはならない人。
祐樹がいるから頑張れている。
だから。私だって祐樹の夢に力を貸したい。
……そういう存在に、なりたい。