【恋愛短編】味噌らーめん


女を忘れ、凄まじい勢いで麺だけを食べ尽くす。

麺がなくなり、スープだけになった丼。

スープの表面に、悲しげな顔をしているあたしが映っている。



「明日こそは子牛印のバターを絶対手に入れてやる! て言うか、スーパーの開店時間に行ってやる!」



丼にラップをかけて冷蔵庫に入れると、あたしはそう心に決めた。




――翌朝。


あたしは1限目の講義をサボって、スーパーの前に立っていた。

開店まで、あと5分。


開店セールを狙ったオバちゃんたちが列を作っている。

このなかに、あたしと子牛印のバターの仲を引き裂こうとする敵はいないと確信する。



「あれっ、おまえ……」



なんとなく、聞き覚えのある声。

隣を見ると、昨日あたしから子牛印のバターを奪った男が立っていた。



< 11 / 34 >

この作品をシェア

pagetop