【恋愛短編】味噌らーめん
相手はスーツを着た若い男で、見ず知らずのあたしに突然睨まれて唖然としていた。
買い物カゴに入れるのも忘れ、子牛印のバターはまだ男の手の中にある。
「そのバター! あたしが買おうとしたのよ!」
「……は?」
「なにもそのバターじゃなくたっていいでしょ? ほら、こっちにしなさいよ!」
そう言って、バターを売るスペースの半分を占領している有名メーカーのバターを男に押し付けた。
「いや、俺はこのバターがいいんだよ」
「あたしはこのバターじゃないとダメなの!」
「いやいや、早いもの勝ちでしょ。先に取ったのは俺の方だし」
男は呆れた顔をしながら子牛印のバターを買い物カゴに入れ、有名メーカーのバターを棚に戻す。
「ああああっっっ!」
半狂乱になるあたしを見て、男はひどく迷惑そうな顔をした。