【恋愛短編】味噌らーめん
「……うるさいよ、おまえ」
「……あたしの…バター…」
「明日来れば?」
「明日じゃダメなのに。味噌ラーメンがぁ……っっ!」
目に涙を溜めるあたしを見て、男の顔がパッと輝く。
「なに? おまえも味噌ラーメンにはバター入れるタイプ?」
嬉しそうに言う男のカゴの中には、さっきあたしが買った怪しげな『幸せはこぶ味噌らーめん』があった。
同類! と喜ぶよりも、さっきから『おまえ』呼ばわりされていることが不愉快だ。
「おまえって言わないでよ。あんたと同類なわけないでしょ、バカ!」
あたしと子牛印のバターを引き裂いた分際で『おまえ』ってなによ!?
ていうか、おまえごときが味噌ラーメンにバターなんか入れるなよ!
ムカムカしてきて、あたしはその場を大股で歩き去った。
「……ていうか、おまえも『あんた』って言うなよ」
そんな男の声なんて、あたしの耳には届いていなかった。