YUKI˚*








「ダメーーーっ!!!」





あたしは知らない男子に抱きついた





その勢いで二人とも思いっきり地面に倒れてしまう



……いたい




「……ってぇ、何だよ?!」



彼は驚いていた



当然だ



「だって……飛び降りようとしてなかった?」




目が良いあたしは、さっき違う校舎の屋上から彼を見つけたとき



彼はフェンスに手をかけて外を眺めていた





それがあたしには




すごく寂しくて




苦しそうに見えて




何か嫌な予感がして



須嶋くんを放って彼をずっと見ていた



彼が下を覗き込むようにして身を乗り上げた瞬間




もう



あたしは走り出してた







「………は、ただフェンスに手かけてただけだろ!」



彼はあたしを振りほどいて起き上がる




「え……そーなの」



「勝手に勘違いしてんじゃねーよ」




そう言い残して、出口に向おうとする



「……………」



なんでだろう




迷惑かもしれない


ううん、きっと大きなお世話だ





でも…





でも!




「……あのっ!待って!!!」






「…………」





彼は足を止めた



止めてくれた





大丈夫



あたしは思い切って言った



「何かあったときは、あたしに言ってくれないかな」



変なこと言ってる



そんなのわかってる




でも





彼は……今にも消えてしまいそうで



怖かったの


「…………っ」



彼は何か言いかけたみたいだったけど




「……だから、違うって言ってるだろ」



それだけ言うと、そのまま行ってしまった





「…あ」




そのすぐ後に、少し息を切らして入ってきたのは






須嶋くんだった



「………ゆきちゃん…足早っ…俺見失なって、まだ学校の中よく知らねぇし…」




そうだった



須嶋くんのことすっかり忘れてた




「……ごっ、ごめん!」





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