YUKI˚*









本当はわかってたんだ




須嶋くんが、2人でここに来たかったって言ったとき



ううん




もう、ずっと前から






こうなることは







でも



どうにかなるんじゃないかって



どこかで期待してた





だって嫌だよ



嫌だ







これが




最後になるなんて







須嶋くんがあたしをここに連れてきた理由




最後の




想いでを作るために










「……なんで?須嶋くん……」




やっと声を出したのに



声は掠れていたのに




キミはまだ





笑ってる





「俺が女遊びヒドいのは、ゆきちゃん知ってたでしょ?」




何の悪びれもなく



そう言うけれど




違うよ、だって




「……須嶋くんは変わった……」




最初に出会った頃とは違う



須嶋くんは


変わった





だけど、彼は首を横に振った





「俺は、こーゆー奴だよ」







笑ってそんなこと言わないで



そんな


悲しそうに笑わないで





でも、言葉は出てこなくて



もう



何を言っても意味がない気がした






だって須嶋くんは



ずっと前からこうするって決めてたみたいに



かたい決心が




感じたくなくても、伝わってきて











「じゃあね、ゆきちゃん」








行ってしまう



何か言わなくちゃ



でも



やっぱり言葉は出てこなくて



出るのは



涙ばっかりで





ごめん



ごめん、川村くん



あなたに見せてあげるって言ったのに



みんなで幸せになるって…




でも、思っていたより



溝は深かった





小さくなるその背中は



ぼやけてもう見えないし






一人取り残されて



寒い




寒いよ須嶋くん





なんであたしに



自分の上着をかけていったの?




さっきまでの須嶋くんの体温で


体はとても温かい




その温かさが



すごく



辛くて




寒いよ






どうりで今日は寒いはずだ






雪が




降ってきた







冬の海に溶けていくそれは



あんなに大好きだったのに




もう






大嫌いだ











キミと別れた



冬の







季節ーーーー。










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