YUKI˚*
「ごめんね…川村くん……」
2人で来たところは
屋上だった
「なんで白川が謝るんだよ」
「……だって、見せてあげるって言ったのに…」
「白川」
どうして川村くんは、そんな顔するんだろう
須嶋くんも川村くんも
こういうときに
笑うんだ
「もう、俺でいいんじゃない?」
「え…」
「まぁ、今すぐには無理だろうから……待つよ」
「…………」
なんで
なんで責めないの?
ほら、だから俺の言った通りになっただろって
やっぱり無理だっただろって
言えばいいのに
決してそんなこと言わない
優しい
優しすぎるんだよ
川村くんは
でも、だからって
あたしの心は…
「もう、あたしは須嶋くんの彼女じゃない」
「………」
「でも、友達としてだったら学校に来るように言うくらい…
「白川!」
ガシッと肩を掴まれて
あたしは身動きが取れない
「…もう、アイツには関わるな」
「……なんで?」
川村くんは須嶋くんの友達でしょ?
なんでそんなこと言うの?
「もう、どうにもできないんだ。誰も」
川村くんは
すごく、辛そうだった
そっか
あたしが須嶋くんに近づけば
傷つく人がたくさんいる
もう
本当に想うだけになるの?
「川村くん…」
「……何?」
「あたしまだ、須嶋くんに何があったのか知らない」
「…………」
どうして須嶋くんがケンカしたのか
なんで学校に来なくなったのか
あたしに別れを告げた理由も
全部
全部
あたしは何にも、知らないの
「川村くん?」
「……っ」
あ
「ごめんっ!もう、いいよ!聞かないから!」
川村くんは
今にも泣きそうだった
聞けない
聞けないよ
でも、これで良かったのかも
もう何も知らないで
全部無かったことにして
あたしは
忘れなくちゃいけないんだから
結局あたしは、川村くんに何も聞けないままだった