YUKI˚*




「……いや、それはいいけど。結局何だったの?」



「あ……なんか、さっきの人飛び降りようとしてるのかと思って……」




「え?!まじ……」



須嶋くんが驚いた顔をして


なんだかそれが意外で



新鮮だった





「あ、でもあたしの勘違いだったみたい!はは…」




自分で言いながら


笑えないよね


恥ずかしい…



けど須嶋くんは、笑ったりはしなかった



「……大丈夫?さっきの奴キレてったけど」





……やっぱ怒らせちゃったよね



ちょっと落ち込んだ




けど



「うん、大丈夫!助けられなくて後悔するよりは……全然……」



そう、それが



あたしが今までずっと…


「優しいな、ゆきちゃんは」



須嶋くんが突然そんなことを言うから


あたしはびっくりした




彼の方が、とても優しい笑顔で笑っていて



これが本当に須嶋くん?



あの不良の須嶋くん?



って、疑ってしまうほどだった






でも



その笑顔に微かに見えた



頬の痛々しい傷




それが、この人とはあまり関わっちゃいけないんだと


明らかにそれを物語っていて





彼は何か話があったみたいだけど


とりあえずこの場を離れよう




彼の笑顔を見ていると



なんだかあたしは




おかしい



「……あ、もうすぐ昼休み終わっちゃう」



そう言って立ち上がろうとした



そのとき




痛っ……!



突然足首に鋭い痛みが走って


倒れそうになったのを





須嶋くんが支えてくれた




「 さっき倒れて、足痛めたんじゃない?」


彼がそんなことを聞いてきたけど


あたしに返事をする余裕なんてない




だって



あたしは須嶋くんに




抱きつく形になっていたから



わわわわっ……!




とっさに離れようとして


須嶋くんからぱっと手を離す



けど、よろめいてしまって



「きゃっ…!」



また須嶋くんに抱きついてしまった




「おっと♪」



須嶋くんがニヤりと笑う



あれ……?なんかさっきの笑顔と違う?


なんかその笑みが


怪しく見えるのは




気のせい?





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