YUKI˚*










「ゆきー」



1階からお母さんの呼ぶ声が聞こえる


あたしは自分で朝は起きれるから、お母さんに呼ばれるなんて珍しい



「はーい、起きてるよー?」


「お友達が迎えにきてるわよー」



え?



お友達?




あたしはパジャマのまま急いで階段を降りる



「ちょっと、ゆきー?ちゃんと着替えてから来なさいよ!」



そんなお母さんの声も無視して



そのまま玄関に行って外に出た



そこには





「……まなみん!」



「おーゆきっ…て何その格好!準備してから来なさいよ」



「…っえ、なんでまなみん……」




当たり前みたいに



まるで今までもそうしてきたみたいに




まなみんが今



目の前にいる




あたしはそれがよく理解できなくて





どうして?




あたしが黙ってまなみんを見つめていると



「おはよう」



突然まなみんがそんなことを言った




「…え?」




「おはよう……って、これから毎朝言いにくる」




そう言うまなみんは…



どうして




みんなそんな



真っ直ぐな瞳をしてるの?





「もう一瞬も、ゆきを一人にしないから」



「まなみん……」



「ほら!早く準備してきな?」



まなみんはあたしの背中をトンと押した




「……うん、わかった。待ってて!」



そう言ってあたしは、急いで準備をしに自分の部屋に戻った




階段を駆け上がりながら



気を抜いたら、泣いてしまいそうで




優しさに



こんなに甘えていいのかな




きっとこの世界には



優しくない人なんていないよね



だってあたしの周りの人はみんな


悠斗くんも


ユリちゃんも



まなみんも



川村くんも





須嶋くんも




本当はみんなみんな



すごくいい人で




あたしは恵まれてるんだ



だから




泣いちゃダメだよ








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