YUKI˚*







「アイツは絶てー許さねー」



いつか



病院の男の人からも聞いた言葉




どうして須嶋くんは


そんなことばかり言われてるの?



どうして須嶋くんが


そんなこと言われなくちゃいけないの?




須嶋くんは一体、何をしたの?




ただわかったことは



この人達は、須嶋くんのいい知り合いではないってこと




「失礼します」



あたしは男の人の手を振り払って、背を向けた




「待てや、おら」



でも、腕はまたすぐに捕らえられて



「お前は餌なんだよ。須嶋をおびきだすためのな」




男の声は私の中でこだまする






おびき出す




この人達


バカじゃないの



「須嶋くんは来ないよ?あたしなんかを人質にしても」



「はぁ?」



「あたし達別れたし、もう何の関係もない」




自分で言ってて



まだ、胸が痛むのは


あたしは本当は期待してる



須嶋くんが来てくれるんじゃないか



須嶋くんに会えるんじゃないか




だってあの人はそういう人だよ




初めて出会ったときもそうだった



何の関係もないあたしを、助けようとしてくれたんだよね




あたしじゃなくても


ユリちゃんが同じ目にあったとしても


きっと



須嶋くんはーーー





「おら!さっさと来い!」



男に強い力で腕を引かれて


抵抗しようとしても、あたしの力で勝てるはずもない




「嫌だっ!離してーっ!」



ありったけの声で叫んだ



でも、ここはひと気のない帰り道



誰も


来るわけ





「何してんだよ、てめーら」



それは



あたしの幻想かと思った







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