YUKI˚*








みんなが泣いてた



すすり泣く声も



構わず声を出して泣く人も





その中でただ一人



泣いてないのは



あたしだけ





なんでかな



どうして涙が出てこないんだろう



みんなみたいに泣けないの




楽しい思い出がたくさんあったよ



泣けるくらい楽しい日々だったよ




でも



泣けないのはきっと




もう、泣きすぎて



あたしの中に



涙が残ってないからだ





本当の本当に悲しくて涙を流すことを知ってしまったから



これくらいで



もう、泣けないんだ






「卒業生代表、川村 優」



「はいっ」



隣のまなみんの



隣に座っていた川村くんは勢いよく返事をし



前に、進んでいく





その後ろ姿を見つめて



あの背中に




何度助けられただろう








優しいんだ



本当に





ありがとう




大好きだよ、川村くん






すると隣で




ぎゅっと手を結んできた




まなみん



まなみんは涙で顔がぐちゃぐちゃで





かわいくて



いつも、あたしの支えだった




辛いとき


側にいてくれた




間違ったとき



叱ってくれた




もう、その友情は絶対に



一生変わらないから




あたしはぎゅっと




まなみんの手を握り返した







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