YUKI˚*
そう言って子どもみたいに笑う須嶋くんを
かわいいと思った
何でだろう
屋上に上がって来るまではあんなに怖かったのに
今までのほんの少しの時間で
あたしは須嶋くんの笑顔をいっぱいみたよ
もう、怖くない
だから自然と言うことができた
「ありがとう」
「……ん」
須嶋くんが
照れているように見えるのは…
気のせいなのかな
なんか、もう全然怖くないよ
「ふふっ」
「……え、何?」
あ、しまった
思わず笑っちゃった
「なっ…何でもないよ!」
「……ふーん」
あたしが必死に首をふって、須嶋くんは少し気になるみたいだったけど
問い詰められなくて良かった
と、安心した
これから言われることなんかちっとも知らなくて
「それより、屋上で言おうとしたことなんだけどさ」
須嶋くんがそう切り出すから
もう逃げ出せない
ただこのときのあたしはもう
須嶋くんの良いところを知ってしまったから
逃げる必要がなかったんだ
ちゃんと聞こう
そう思ったの
「うん」
少し静かな時間が流れて
須嶋くんが言った
「俺と付き合って」
保健室の窓からオレンジ色の日の光が差し込んで
須嶋くんの金色の髪が輝いている
綺麗で
本当に綺麗で
こんなときにそんなことを思うなんて
あたしはきっとおかしかったんだ
だからあたしは
こんなことを言ってしまったの
「…うん」