YUKI˚*









雨は上がったはずだった



だからちゃんと天気予報を確認しないで




折りたたみ傘も持ってこなかった



あたしの失態




「まぁ、帰るときには止むよね」



「んー、天気予報では午後ずっと降るらしーけど」





カフェの窓側の席は



その雨が酷くなっていくのを嫌に実感させる





「そんときは俺の傘やるよ」



向かいに座る彼はブラックコーヒーを飲みながら



そういえば甘いもの嫌いだったな





そこは、あの人と違うんだ





「悠斗くんが帰れないじゃん」




この日あたしは


悠斗くんと二人で会っていた








「……で?今日は何の用?」




そうだ


そうなんだ



あたしが悠斗くんと二人きりで会ったわけ





「別に…特に意味はないんだけど」



そう



会うこと自体に意味はない




だってこれは




賭け




ユリちゃんを試す



それだけのために





「は?…なんだそれ」



「…ご、ごめん」



「………ま、せっかく来たし久しぶりに何かしよーぜ」





そう言って笑う彼は



本当に変わってない




ぶっきらぼうな言葉も



それに隠れている優しさも





だからきっと



ユリちゃんは忘れられないんだ






「……ユリとは、上手くやってるみてーだな」



突然のユリちゃんの話題に



少し驚いたあたし




そこにはあまり、触れてこないかと思ってたから





「…う、うん!まぁ、色々気が合うしね」





でも今はもう




ダメかもしれないけど





「うん……仲良く、してやって」



そう言った悠斗くんの笑顔は



あたしに向けられたものじゃない




あぁ、ユリちゃん



あなたはこんなにも愛されてるよ




ユリちゃんを思う悠斗くんの顔



悠斗くんにこんな顔させられるのは



ユリちゃんだけ








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