YUKI˚*
予約されていた店で
みんなのいる席へと向かうと
その中に
悠斗くんを見つけた
傘、返さなくちゃ
持ってきた傘を握りしめる
大丈夫
傘を返すだけだから
「悠斗くん!」
そう呼んだ声が
思ったより大きく出てしまって
みんなが一斉にあたし達を見た
あたし達は一瞬、固まる
特にまなみんと、川村くんの視線が痛い
だけど、呼んでおいて黙っているわけにもいかないので
「あ、あの…この前の傘……ありがと」
次はできるだけ控えめに言った
「…別に良かったんだけど、ありがとー」
悠斗くんは何もなかったみたいに普通にそう返事をして
クラスのみんなも徐々に騒がしさを取り戻していった
ただ、二人は
まだあたしを見ている
「悠斗と会ってたの?」
そう言ったのは川村くんだった
「あ、うん」
別に隠すことでもないし、あたしは普通にそう答えた
「はは、まさか二人きりで会ったわけじゃないもんねー」
まなみんはきっとフォローしようとしてくれたんだ
だけど
「…………」
否定できないあたし
なんだろうこの空気
なんか、やだ
いやだ
言わないで
「……忘れたの?」
言わないで
昔のこと
「もう、忘れたの?」
「忘れたよ」
きっぱり言ったあたしに
まなみんは驚いて
なんでそんな
心配したような顔してるの?
大丈夫だよあたし
「ほら、あっちにご飯食べ行こー!」
ほら、大丈夫でしょ?
あたしは、まなみんと川村くんの手を引っ張って
無理やりこの空気を掻き消した
このときの川村くんの顔に
気づかなかった
それに気づいている
まなみんにも