YUKI˚*









髪は黒色だった




格好だってすごくシンプルで





だけど





この人は




「いつインターフォン押そうか迷ってたんだけど、出かけてたんだ」




平然と




そこに立って



何か喋っているこの人は





………何?






「……倒れたって聞いた」





突然そんなことを言って






だから




来たの?




「大丈夫なの?」




そして



なんでそんなこと言うの?





それが返って




あたしには、辛いのに






何も答えられないあたしに




彼は次、





真剣な顔をする





「悠斗と付き合ってるんだろ?」








彼は



変わった





見た目がまず違って



もうあのときのような




怖い印象は全く受けない





「え……なんで……」





だけど今のあたしには



怖い


なんで




キミがそんなこと





「優から倒れたって電話きたときに、聞いた」




川村くんと連絡



取ってたんだ…






そして目の前の彼が




笑った



「良かった」




……よかった?





よかった…って?






「正直俺、あんまアイツのこと好きじゃないけど…俺よりはマシだよな」




何を思っても




心の中だけで




言葉にはできない





「それ聞いてやっと、話せると思ったんだ」





柔らかく



彼はまだ笑ってる





……話



って





なに







「話したいことがあってきた。どーしても」





一方的に話してる





今さら



何を










「本当のこと…聞いてくれる?」







ーーーーーーー…








そのとき




心の中で




何かが弾けたみたいに





"本当のこと"







ずっと



信じたいと思ってた





本当は何か




理由があったんだって










運命だったのかもしれない




地元



ここに帰ってきたこと





雪が降ったこと




倒れたことも






全部




こうなることが







運命だった?







「話して……須嶋くんっ」




須嶋くん







そしてゆっくりと




話し始めた






「約束……したよね?」




須嶋くんの言葉は今でも



やっぱりあたしの心を揺るがして




染み込んで来る





そして一気に




あの頃へ







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