YUKI˚*








あたしは



ただ黙って



須嶋くんの話を聞いてた




つもりだったけど気づいたらあたしは




やっぱり泣いてる






「ごめんな」




でも、ほら




やっぱり須嶋くんは



泣いてるあたしより





悲しい顔をするんだ







…でも




「あのとき…『好きにすれば?』って……」




あたしが男の人達に連れて行かれそうになったとき



そう須嶋くんは言った





あたしはもう



嫌われたんだって、そう



思ったんだよ?







すると





今、目の前の須嶋くんはすごく悔しそうに言った





「……もう俺らに繋がりはないって、思わせないとまたゆきちゃんは狙われる」





そう思って



須嶋くんはあんなことを言って




あたしを置いて行ったの?







じゃあ



全部




全部






………あたしの、ために?






「本当はね、ずっと」



涙が止まらないあたしに





須嶋くんは







「大好きだったよ」






あの頃あたしが



一番欲しかった言葉をくれた






須嶋くんが




あたしのことを



好きだった




あたし須嶋くんに







嫌われてなかった…






本当はね




あたしも




ずっと、ずっと



須嶋くんのことーー






「でも、もう遅いよね」




あたしの思いはいつも



言葉にする前に崩される




「ゆきちゃんと俺は、住む世界が違った」



けど須嶋くんが言ってることの



意味がよくわからない



「……何が違うの…」



確かに須嶋くんとあたしは


性格も生まれ育った環境も違うけど




それは



いけないこと?





「俺は真っ黒で、ゆきちゃんの白を……汚したくなかった」





……わからない




わかったことは





もうキミは




あたしと





「それが、言いたかっただけなんだ」





一緒になる気はないんだね








そっか


じゃあ



あたしが言うことは





「ありがとう」




これだけかな






「ははっ………やっぱり、変わらないね。ゆきちゃんは」




須嶋くんはそう言って笑った






泣いてばっかりで



それしか言えなかったけど





須嶋くんの本当に笑った顔を



また見ることができたから





もう




いいや








< 152 / 172 >

この作品をシェア

pagetop