YUKI˚*






あたしは、



ユリちゃんの幸せを




お互いがお互いの幸せを



願ってた





あたしは、叶ったよ



『ゆきちゃ〜〜んっ!!!大好きぃぃ!』




電話の向こうで



泣き崩れているユリちゃんの頭を撫でることはできないけど




「あたしも」



きっとこれで十分





そのあともしばらく、ユリちゃんは電話越しに泣いていて



あたしも黙ってただそれを聞いていて



ただただ愛しくて





「もう大丈夫?」



『うん』



「じゃあ、もう切るよ?」


『……うん』



「ばいばい」


『ゆきちゃん』



「……ん?」






『幸せに』







シアワセに







『なってよ…?』






それまであたしは



どんなにユリちゃんが泣いている声を聞いていても




泣いていなかったのに





それは



ポロっと床に落ちて



そして初めて気づいた





「……うん」



『ばいばい』






真っ暗になった携帯画面



そこにポツポツと降り始めた雨のよう




携帯が壊れるから、急いで拭った








『シアワセに』



まなみんも



ユリちゃんも



……須嶋くんもみんな




同じことを言うんだ




どうしてみんなはそんなに、あたしの幸せを願うの?



あたしは




幸せじゃないように、見えるんだね




でも、そうだ





今あたしは、普通に大学に通って



大事な友達もいて



何ひとつ不自由ない生活を送っているのに




なのに




幸せと思えないのは





あたしにとっての幸せが



もう




あのときに





あの頃で




『ゆきちゃん、俺のこと好き?』



『えー、須嶋くんは?』




終わってしまったから





『大好きだよ』





一番、幸せだった







シアワセに



なりたいな




でも、もう



あたしにとってのシアワセは




決まってしまっているから






ならもうあたしは



一生




幸せにはなれないのかもしれない






ごめんね



みんな




みんなの思いに、応えられなくて




でもあたし





不幸ではない









みんなが



いるから







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