YUKI˚*






電車に何度も揺られながら



あたしは色んなことを考えては



頭を左右に振って




早く、早く着いてほしいと



窓が地元の景色になるまで思った





電車の中でも少し寒くなったと感じながら




着いたのはもう、夜だった




電車を降りて



急いでまなみんの家へ向かう





はずだった









「……川村くん………?」




駅のホームのベンチに腰掛ける



彼を、見つけるまでは。






「……なんで?」



「俺、さっきまで佐々木の家にいたんだ」




まなみんの家に川村くんがいた?



じゃあ



さっきの電話も聞いてた?





「佐々木が、『ゆきが今から来る!』って言うから」



ってことは、電話の内容は聞こえなかったってこと?




「話はなんとなく…わかったけど……」





川村くんはあたしと



目を合わせようとしない




じゃあなんで



ここに来たの?




どうして

「なんでまなみんを振ったの?」




今一番聞きたかったことが、最初に出てくる



「別に好みを押し付けようとするわけじゃないけど…でも……まなみんはずっと、ずっと川村くんのこと……」




最後の言葉は


やっぱりあたしからは言えない


けど




「はは、それ白川だけには言われたくないよ」



川村くんは笑いながら



やっとあたしと目を合わせてくれたけど



笑ってない




そうだ



あたしがこんなこと言える立場じゃない



あたしは何度も



川村くんの気持ちを踏みにじって、須嶋くんを選んできたのに





「佐々木はいい奴だと思うよ」



その言葉に



嘘も冗談もないのはわかる




「…じゃあ、なんで」



「まだ白川への気持ちが吹っ切れてないまま、佐々木の所へは行けない」




はっきりと



次は逆に目を見て言われると、何も言い返せなくなる




彼の言っていることは正しい



曖昧な気持ちで選んではいけないこと



彼はいつだって正しくて



優しい





まなみんごめん



あたしのせいだね



川村くんにしっかり、言うことができなかった



彼のことは恋愛感情ではないけど、友達としてすごく好きだから



嫌われたくはなかった




諦めてもらうように言うことから逃げてたのはあたし




あたしのせい







そのとき



驚いて、声は出なかった



ありえないのに



どうしてまた




こんなタイミングで




季節はずれの




雪は





「行けよ」



川村くんの言葉が



いやに低く、はっきりと聞こえた




「アイツのところに行けよ!お前らを見届けて気持ちの整理をつけないと、俺は佐々木に答えられない」




その言葉を聞いて


彼はこのことを言いに来たんだとわかった




「自分の気持ち……気づいてるんだろ?」




だめだ



もう



わかってしまった





雪が降って



あたしは今どうしようもなく





キミに会いたい




やっぱり



あたしは





今でも




「やっぱり今でも……好き」




言葉にしてしまったら




もう止まらなくて


涙が出そうで



だからあたしは川村くんに向かって






大きく




頷いた







「もしもしまなみん!」



『ど、どうしたの?』



「もうちょっと待ってて!あたし……全部終わらせてくるから」




もう、間違わない



「こんどこそ絶対に、幸せになるから!」





『………そっか、頑張れ』










みんながみんな




背中を押してくれる





あたしは走る




雪が降ってる



季節はずれの雪





こんな日は必ず




彼はいる






あたしは走る






あの海へ






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