YUKI˚*







掴んでいる手は



振り払われていないのに




「俺は白川を、幸せにできない」




言葉で彼は、あたしを突き放す



でも


もうあたし



気づいたんだよ




「……幸せってなに?」




須嶋くんがあたしを幸せにできないなんて



そんなの



知らない




「須嶋くんに幸せにしてもらうことがあたしの幸せじゃないよ!」




だってあのとき



君が隣にいてくれたのは確かに



あれは




幸せだった





「あたしが須嶋くんを幸せにすることが、あたしにとっての幸せなのっ…」




もう掴んでいる手も



震えてて



声は涙になって、須嶋くんの服を濡らす





「俺を幸せに?」



「そう」



「……できるの?」



「須嶋くん」




あたしはその背中に



抱きついた





「あなたは、一人じゃないよ」






彼の体は




震えてて





初めて



キミが泣いてることを知った




ずっと


本当は泣いてたんだね



でも、もう大丈夫




もう




一人にしないから





きっと


ずっと待ってたんだ



あたしは


このときを






「そばに……いさせて?」






彼はあたしを、優しく





包み込んだ













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