YUKI˚*
「なんでここにいんの?」
須嶋くんがなだめるように言った
「いや、教室にいなかったから……ここにいるかなって……」
「なんか用があったの?」
「あ、うん……」
「なのに起こさないで俺の寝顔見てたんだ」
「えっ…違っ!!」
「はは、へんたーい」
「っ………」
この体勢で顔が見えないのが本当に幸い
きっとあたし
ゆでダコみたいになってる
「……離して」
やっと出た声はとても小さくて
でも、こんなに近いんだから聞こえたはず
「なんで?俺達付き合ってんだから問題ないじゃん」
ズキンッ……
須嶋くんに抱きしめられたまま、胸が痛む
「あのね、その事なんだけど……」
「ん?」
須嶋くんが優しく聞返してくる
さっきの涙が思い浮かんだ
まるで須嶋くんが泣いてるみたいに見えた
う゛ぅ……
あーダメだめ!頑張れあたし!!
あたしは息を思いっきり吸い込む
「付き合うのは……」
できないって
そう、言うんだ
ぎゅ…っと、
彼の抱きしめる力が強くなる
須嶋くん………
"付き合うのは……"
「……条件がある」
精一杯の勇気も虚しく
あぁ、何言ってんの……あたし
でも
「はは、条件って?」
須嶋くんは笑ってくれてるみたい
とりあえず、よかった
「条件、は……」
どーしよ…
付き合うのは絶対ごめんだから
須嶋くんには絶対にクリアできないような……
あ
「今度のテストで10番内に入るとか!」
咄嗟に思いついたこと
これなら!
学校にもろくに来てなかった須嶋くんが
テストで10番内に入るなんて
ありえない
だから、付き合うこともない!
「へー、頭いい奴がいんだ?」
須嶋くんは少し抱きしめる力を緩めた
別にそんなこだわりは無いけど
んー……そういう事にしといた方がいいのかな
「…うん」
「じゃあ、それまでは付き合ってないってことになるの?」
「そう…だね」
え?
この人、条件クリアできる前提で言ってる?
それぐらいバカなのか……
まぁ、そっちの方がいいけど
「わかったよ」
須嶋くんがそう言ったことで、やっと体が解放された
あー…心臓止まるかと思った…
須嶋くんは、ニコニコしながらあたしを見る
なんとか、傷つけずに
付き合わなくてすみそう
そう考えた
あたしがバカでした