YUKI˚*
そんなバカなやりとりをしていたら
いきなり、周りが騒がしくなった
「おー?須嶋じゃーん??また女かよ」
近付いてくる柄の悪そうな人達は
須嶋くんのことを知っているみたいだった
どうしよう……恐いよ……
すると、さっきまであんなに優しかった須嶋くんの顔つきは一変
「あぁ?…邪魔すんじゃねーよ」
見る人が一瞬で固まってしまうくらいの冷たくて、鋭い瞳
あぁ、あのときの
須嶋くんに始めて会った日の
あの瞳だ……
「この前の借りは、ちゃ〜んと返してもらうぜ?」
そう言って、先頭の一人が須嶋くんの胸ぐらを掴んだ
「ちょっ…やめ
目の前に
赤い何かがーー
あたしの言葉を遮って
目の前の須嶋くんは
須嶋くんじゃないみたい
違う
元に戻っちゃったんだ
これが
彼の本当の姿
須嶋くんは強かった
何人がかりでかかってきても
須嶋くんは負けない
「ごめん、大丈夫だった?」
気づくと、須嶋くん以外の男の人達はみんなその場に倒れていた
……………
「えっ…ゆきちゃんどーしたの?!恐かった?」
涙が溢れて止まらない
頭をポンポンと撫でる手
須嶋くんは
優しい須嶋くんに戻ってる
でも
「須嶋くんが………恐かった…っ…」
頭を撫でていた手が止まる
あたし
すごく酷いこと言ってる
わかってる
けど
やっぱりあたし
この人のことは
好きになれない
「帰ろう」
須嶋くんはそう言って
でも、手を繋ごうとはしなかった