ＹＵＫＩ˚*

何なんだよ



あいつ





そんなことを思いながらも



少し早足に行ってしまうその背中を


俺は見えなくなるまで見つめていた






ついさっき



俺は、全然身に覚えのない奴に絡まれて



「お前…覚えてねーなんて言わせねー」



「だからてめぇなんか知らねーよ」


そう言った瞬間



あぁ


もうだめだ




と思った



案の定



相手は俺に拳を出してくる




面倒くせーと思いながらも



俺はそれを交わして




相手の腹に蹴りを入れた



そのまま相手は崩れ落ち



こいつはもう動けない



これで終わりだ、と




思った


だけど




頭に衝撃が走って




一瞬



わからなくなる



けどすぐに理解した



相手はひとりじゃなかった



連れがいたんだ



油断した後ろから狙われた






汚ねーー




その衝撃で顔に傷が付いたことは



血が流れ出してからわかった




その後は



覚えてない




気づいたら、俺以外は地面に倒れていて





辺りは赤一色のーー…



俺がやったことだとはわかっても



気持ちが悪くて



俺はその場を離れた




少し歩くと何もない公園が見えて



俺はそこで芝生に横になる




何も



考えたくない


思い出したくない







「きゃーーー！！！」


「うるせーな…」







あいつはバカか？




俺にコートなんか着せて



傷の手当てまでしていって……





けど




俺も何も言えなかった



あいつに圧倒されたってのもあるけど





あの



心配したような、いや、ホントに心配してたのか





あの顔








何なんだよ



ころころ顔変えやがって



今まで色んな女と遊んできたけど


あんな女初めてだ





俺とはまるで正反対




「大切なんだよ」



綺麗事だ



きっと今まで、幸せな環境で生きてきたんだろう





俺には無い


あの真っ白なーー





そう思って空を見上げると、もう雪は止んでいた



コートで気がつかなかったのか


そーいえばコート……



返しに行かないとなー…





そういえばあいつが着てた制服……





「ふーん……。」


いいこと思いついた



次は


あの女だ




いい暇つぶしになりそう


ちょっと、


面倒くさそうだけど。







俺はこのとき、まだ何も知らない


遊びでは終われないということ





そしてそれが



大きな間違いだったということーー







雪は



まだ止むことを知らない