YUKI˚*





「あ…あれだよ、俺の幼馴染」


そう言って悠斗くんが指差したのは



あのとき……



そして今はそこにいる


『ユリ』さん




「………え?」



必死に頭を働かせても、追いつかない




どうして隣の家から須嶋くんが出てくるのか


何してたのか、ユリさんと



そしてそのユリさんが悠斗くんの幼馴染


悠斗くんの幼馴染は、好きな人ができたんだよね?



二人はまだあたし達に気づかない



あぁ、そうか


悠斗くんの幼馴染が好きになった人



ユリさんが好きになった人



悠斗くんと別れるきっかけ



それは、須嶋くん




「そっか、もう付き合ってんだ」



悠斗くんが言った



違う



あたしだよ


須嶋くんと付き合ってるのは


ーーーあたし




「ゆき…ちゃん?」


須嶋くんがやっとあたしに気づいた



久しぶりに聞く声


こんな風に、聞きたくなかった



でも、その声はすぐに機嫌の悪い声に変わった




「なんでソイツといるんだよ」





何それ


それはこっちのセリフだよ




あたしが黙っていると、須嶋くんの腕に絡みついたまま



ユリさんが言った



「悠斗……その子を家に入れたの?」



なんでユリさんは、悠斗くんのことを気にしてるんだろう


「ああ、だから?」


悠斗くんはどういうつもりで言っているの?



もう、


考えるのが疲れてきた




「ゆきちゃん」



須嶋くんがまたあたしの名前を呼ぶ



でも


「……………」



「何とか言えよ!」



どうして


須嶋くんが怒鳴るの



何か言えって?


須嶋くんに言うこと?


そんなの












「……別れよう」












これしか




これしかないでしょう?






「……は?」



あたしが別れようって言ったら



須嶋くんもこんな悲しい顔をするんだろうか


って思ったけど



違ったね




あたし、あなたのその


冷たい瞳が大嫌い







「何言ってんだよ」



「そっか、元々付き合ってるっても言えなかったしね」



「おい、意味わかんねぇこと



「サヨナラ!」








追い打ちをかけるように




ねぇ



きっとこうなることがわかってたんでしょう?




走って、逃げるのはこれで二回目



あなたの考えてることが



誰も


みんな


あたしは



もう、あなたは何も言わない



わからなかった






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