YUKI˚*
「白川さんと話すのは、決まってここだな」
冷たい風に吹かれながら
フェンスに二人もたれ掛かる
「悠斗くん……話がある」
あたしはここで、彼に言わなければならないことがある
「……何?」
ずっと、言うかどうか迷っていたけど
決めた
泣いてしまったあのとき
ただ泣くことしかできなくて
まなみんには何も言えなかったけど
黙って背中をさすってくれた
ちゃんと
ケリをつけないといけないと思った
「……ごめんなさい。あたし、悠斗くんのことは好きになれない」
わかった
あたしは悠斗くんを好きにはならない
だって
『だって』
「…そっか、ふらちゃったんだ俺」
「ごめんね…」
「いや、謝んなよ。謝ることじゃない」
「…うん。じゃあ、ありがとう」
そう言うと、悠斗くんは少し驚いた顔をした
「好きって言ってくれて、ありがとう」
今ならわかる
人に好きだと伝えることはとても難しいんだって
もしかしたら
須嶋くんもそうだったんだろうか
あたしに好きって言ってくれたとき
少しでも
そう思ってくれた?
「はは、どーいたしまして」
悠斗くんは笑ってくれた
良かった
「でも、悠斗くんあたしのこと好きじゃないよ」
「……は?」
悠斗くんは変な顔をするけど
あたしは笑った
「でも、嬉しかった。ありがと!」
ここから見える澄みきった空みたいに
心がだんだん晴れて行く気がした
でも、消えない雲もある
大丈夫
きっと、時間が経てばーー
だけどこのとき
彼が少しおかしいことに、あたしは気づけなかった