YUKI˚*
「ゆきちゃん……ごめんっ」
「えっ……なんで謝るの?」
だって須嶋くんは悪くなかった
これっぽっちも
あたしが一人で空回りしてただけだ
「あたしが悪かっ…
「違うんだ」
須嶋くんは、あたしをちゃんと
見て
あの冷たい瞳じゃない
「俺……最初は遊びだったんだ、ゆきちゃんのこと」
ずきって
少し胸の音がしたけど
でも、
「でも、ゆきちゃんと付き合うようになって……どんどん惹かれていった」
すぐにそんなの吹き飛んだ
「ゆきちゃんの、人を放っておけない所とか……多分本当は、出会ったときからもう」
緩やかな風が流れて
「好きだったんだ」
あぁ……あたしも
あたしも言わなくちゃ……
「あたし、この前屋上で悠斗くんをふったの………だって」
『だって』
「須嶋くんが好きだから」
言い終わると同時に
須嶋くんは強くあたしを抱きしめた
あたしもその背中に手をまわして
強く、抱きしめ返した
「本当だよな……今の」
喜びを噛みしめるような
声
「本当……だよ」
須嶋くんの
本当は優しくて
ちょっと意地悪だけど
屈託ない太陽みたいな笑顔
その全部が
「大好きだって」
好きって言うのは
やっぱりすごく勇気がいることだと思う
でも、ちゃんと言えたら
こんなにも心が温かく
嬉しくなるんだね
やっと、わかった
「ゆきちゃんに避けられて、マジ辛かった」
須嶋くんがあたしの肩に顔を乗せて言う
かわいいって思うのも
全部好きってことだったんだね
「あたしも……でも、だから好きって気づけた」
離れて初めて
もう、どれだけ大切な存在だったか
「好きだよ、ゆきちゃん」
どうしよう
また……涙が
「はは、泣き虫」
そう言いながら、涙を拭ってくれる須嶋くん
「うう〜っ…須嶋くんのせいだぁ」
その優しさに、また涙が溢れる
どうしよう
泣いて言えなくなる前に
言わないと
「また…あたしとっ…付き合って、くれる?」
あたしから
「ふっ…俺たち今も付き合ってんじゃん」
「え……でっでもあたし…別れよ…て」
別れようって言った
「俺、認めてなかったから。ずっと付き合ってるつもりだったけど?」
もう、
そんなこと
「……ましまく〜んっ!!!」
あたし今、彼氏に見せられるような顔じゃないよぉ
ぽん、と
頭に大きな温かい手がのって
不思議とあっというまに涙が止まった
魔法みたい
涙で歪んでいた須嶋くんの顔がやっとはっきり見えてきて
あ、あたしの大好きな
優しく微笑む
「約束して」
「え…?」
「もう、離れないって」
子供みたいに須嶋くん
「離れないよ……離さない」
もう、二度と
誓ったんだよあたしは
このとき
須嶋くんにも、言ってもらえばよかったな
離れないって
「はは、ゆきちゃん男前」
「え、真剣に言ったのにー!!!」
そしてあたしたちは
しばらくそのまま屋上で二人授業もサボって
二人で笑い合って
あとからコッテリ先生にも叱られたけど
やっと
やっと本当の
恋人同士になれたんだ